その日の朝、思いつきで「鎌倉に行きたいな」と呟いた。普段のわたしは<予定はきっちり決める派>だが、時々何を血迷ったか<思いつきで行動する派>に変貌する時もある。つまり気分に波がある。それも不規則な大波小波の困った性格だ。因みに西洋占星術に依ればわたしは射手座で、振動の星座と謂われている。然もありなんである。
そんなこんなで細君がその話に乗り、家事を急いで済ませて家を出たのは10時過ぎ。しかも外は雨が降っていた。
JR船橋駅のみどりの窓口で切符の購入と情報の入手を図ろうとするも、利用客が先に11組もありなかなか順番が回って来ない。その突端(とっぱな)の躓(つまず)きがこの日を象徴していたのかも知れない。
だがそれが横須賀行きに繋がった。
やっと来た順番でお得な切符を尋ねてみたが買える切符はホリデーパスしかなかった。丁度夏休み最終日の8月31日だったから購入できたという次第である。しかしパスで行ける範囲を見れば三浦半島は久里浜までOK。それならば横須賀にも足を伸ばしたいという話になった。しかし、窓口で長蛇の列に並んだのが仇となり横須賀まで行ける総武・横須賀線快速電車は出たばかり。まだ10時45分だというのに、横須賀まで直通で行ける次の久里浜行きは11時41分まで無く結局のところ1時間近く待つ羽目に。ステーションセンターのシャポーの中にあるスタバで時間調整。そこで話し合いの上鎌倉行きは中止とし、目的地は横須賀一本に絞る。そして小一時間後ホリデーパスとグリーン券を武器にいざ出陣と相成った。
トンネルを抜けるとそこは雪国ではなく軍港だった。
鎌倉を過ぎると横須賀線は途端にトンネルが多くなる。そのトンネルを抜け、横須賀の駅に着き電車を降りると、ホームの上からいきなり私たち夫婦を出迎えてくれたものは、海上自衛隊のものらしき巨大な艦船だった。
とはいっても護衛艦か何だか軍事オタクではない私にはさっぱり分からない。そこでさっそく艦艇番号を元にネットで調べてみたら、これが中華人民共和国が空母だといってほざいて騒いでいる、海上自衛隊最新鋭の<いずも型護衛艦>の一番艦だと知る。
ヘリコプター搭載護衛艦とのことだが、確かに空母と言われればそう見えなくもない。だが、中華人民共和国の主張が当たらないとは素人目でも分かる。上記の写真を見て貰えば良く分かるが、甲板の舳先に白いドーム状の、レーダーかミサイル防御装置かは定かではないが、明らかに滑走甲板上に障害物があり、物理的に戦闘機や索敵機など甲板上から飛び立てないのだ。
それに先端だって四角くはないからこれでは相当の腕利きでないと飛行機は飛び立てない。中国の空母はロシア型だから甲板の舳先は上に勾配がついて、飛び立ちやすいようになっていたが、これはその真逆で甚だ飛び立ち難い形状だ。まあ改造すれば空母になり得ないことはないが、いざという時に即空母に早変わりとは絶対になり得ない。
オタクでなくてもそのくらいは簡単に分かるのに、お隣の国はご自分の覇権主義&軍備増強主義、領土拡張既定事実作りに余念がなくせに、よく言うよという感じである。
事のついでと云っては何だが、近隣諸国のチャイナとコリアは、どうしても日本が気に入らないらしい。そして、何かにつけて言い掛かりばかり。明治開闢以来やっかいな隣国を日本は持っているといって過言ではない。根拠のないプライドと、メンツに拘り中身が伴わない人々ほど手に負えないものはない。
とはいいながら、我が国も北朝鮮の脅威を口実に、米国の言い値で武器を購入し、しかもその購入品目も定めないで契約を交わしたり、防衛費の総額も決めずに国家予算の概算要求までしてしまう、日本政府と防衛省の愚かさ加減と国民軽視にも腹が立つ。
そんなことが脳裏を掠めた。
訪れれば否応なく、軍事力とか抑止力とは何かを考えてしまうのが『横須賀』という街なのだと思う。よく考えればここは長い鎖国から呼び覚まされた日本開国に縁の地であった。
そんなこんなで駅に着いたのは13:25だからお昼時間はとうに過ぎている。わたしは例の病気だから決まった時間にご飯を食べないといけないが、JR横須賀駅前には飲食店は一軒だけであとは何もない。
仕方なくヴェルニー公園というところを歩いて自衛隊の艦船や米軍の潜水艦など見ながら海岸沿いのデッキの上をショッパーズプラザ横須賀のAEONのディスプレイがある方向に向かってアルキメデス・・・じゃなかった。歩き出す。
わたしはその時点でかなり空腹で目眩がするほどだったが、低血糖でないのは電車の中で計って分かっている。だが、お目当ての横須賀海軍カレーの有名店まで無事辿り着けるかが心配であった。
結局のところ、AEONの店内を抜けて横須賀街道を横断したところにあった。COCO壱番屋で「横須賀海軍カレー」を食べる羽目に。時刻は14:00を杉田玄白・・・じゃなかった。過ぎていたのであった。あ、格調あるわたくしめの文章に変調が・・・早く何かを食べなければ元のわたしには戻ら内臓!HARAHETTA. 『本日天気晴朗なれども波高し』
画像はブレブレだが、この日は構えていなければ身体が持って行かれるほど風が強かったし、それにも増して空腹だったので・・・という事にしておこう。
実は、この日一日体調がすぐれなかったのだよワトソン君。
身体の水平垂直が保てないほどにね。
それでも出掛けるおバカなわたし。
我が細君はあまり辛いのは駄目だからちょうど良かったらしいが、わたしは発言も過激&毒舌系なら食事も激辛系だから仕方なく備え付けのガラムマサラをパラパラ・バラバラ・ドンドコと加え味を調えてから食す。吾ながら辛みの加減と塩梅がよく旨し。自画自賛。これで明朝の排〇時は水戸の黄門様辺りがヒリヒリすることになるであろう。(*何でもなかったよ)
これでようやく本調子。即ちわたくしめ本来の格調も戻って・・・来ないか!
実はこのお店の裏が有名なドブ板通り。そこに迷い込もうとしたら何と明治天皇の行在所入口の石標があった。日本の古い石標とアメリカの国道表示に似せたBARの看板やら英語混じりの通行止め表示など何だか横須賀に来たっぽい雰囲気と臭いがプンプンしだした。
米兵らしき外国人もやたらと見掛ける様になる。
「やっぱり横須賀よね」
細君がこれまで一度も横須賀を訪れたことなどないのに何故かそう呟く。
考えてみればCOCO壱番屋だって6人いた客のうち4人は、つまり私たち夫婦以外は外人客ばかり。因みにこの通りのドブ板はとうに塞がれ、臭いは米軍放出品のミリタリーショップ辺りから漂うセコハン衣料の臭いしかしない。
そこにいきなり現れたのが、ヨコスカ・ネイビー・バーガーだった。いや驚いたよ。
マックとモスバーガーとロッテリアでしか食べたことのないわたしだから、5200円+TAXなんぞというモンスターバーガーがこの世に存在するなどとは想像だにしなかった。人生観がこれで変わるというほどでもないが、いやはや驚き(笑)
しかし、次の瞬間衝撃が走った。何と、この高さはゆうに45cmはあろうかという、通常4〜5人分という「第7艦隊バーガー」と銘打った、巨大バーガーをたった一人で食べた人物がこの地球上に存在していたのである。
誰あろう、かのTHE BEAST ボブ・サップであった!!!
この、目が飛び出んばかりの形相で喰らいつくその凄まじさに、彼のこれからこのバーガーを征服しようという強い決意を見たわたしであった。凄い!とても人間とは思えない!
と思ったら横のディスプレイにもボブの姿が。・・・あれ石やんまでもが。
道理で「人間離れをした感覚」がわたしを襲った訳だ。
ちなみにGWバーガーとはジョージ・ワシントンのことで、その他にも米歴代大統領の名を冠すバーガーが目白押し。冒頭のトランプバーガーは新顔でオバマバーガーだってある。
横須賀海軍カレーを先に食べていなければ絶対に食べていた・・・かも知れない。というのは冗談で、もし直前に何か食べていなかったとしても、わたくしめと細君の胃袋はたぶんこのボリュームを受けつけなかったであろう。しかもわが細君はファストフードやジャンクフードをまったく受けつけないレッドデータブックにも載っている『大和撫子』日本固有の絶滅危惧種である。わたくしめの食指がもし動いたとしても、彼女は間違いなくヤンキー文化を拒絶していたであろう。英語はペラペラなのにね!
う〜ん、何だか凄いモノを見てしまった。横須賀はディープだ。
そう思いながら後ろを振り返ると何と小泉八雲の『怪談』ではないが、
いきなり目に飛び込んで来たのは『顔なしペリー』
わたしと細君の度肝を抜いたのは言うまでもない!
『なにぃ〜THANK YOU PERRY MUCH! だとぉ』
ふざけたホットドックだ。
『ええい、不埒な奴め、ここに直れ。この儂が天に代わって成敗してくれる』
と、その時のわたしが叫んでいたかどうかは記憶が定かではない。
このところ記憶がブチ切れで危ういことこの上ない。
悪しからず!
その後マンホールの蓋を撮ったり、<いきなりステーキ>なる店の前を横切り、ベンチに座るサックス奏者に「テイク・ファイヴを演奏してくれ」とお願いしたが、彼はシャイなのだろうか、じっとうずくまったままで無視されてしまった。
それを見た細君の失笑は買うは、強風で傘の収納袋をなくすはで、今のところいつもの精彩がまったく影を潜めたわたしであった土佐・・・の〜 高知の はりまや橋で〜♪
ところで、・・・
横須賀に行き何か名物料理かB級グルメでも食べようではないか。
というアテもない小旅行だったが、地元の繁華街辺りのスーパーや食料品店や雑貨店、京浜急行の横須賀中央駅周辺を散策し、中央駅前の眼鏡屋さんなどでウインドウショッピングなどしていたら、時間はもう午後三時半を廻っていた。
相変わらず多少の目眩と嘔吐感があり体調は悪い。だが、いつもは食い気ばかりで景色など歯牙にもかけない細君が宣(のたま)う。
「横須賀に来たという記憶に残るものを見たい」
う〜ん、色気より食い気、花より団子の細君にしては極めてめずらしいお言葉だ。
横須賀の空気に触れた所為か、今日一日で人間として格段の成長と進歩を遂げたらしい。
いや、もしかしたら天変地異の前触れか!
何故か司馬遼太郎の『坂の上の雲』が脳裏に浮かぶ。
高校生の時に読んだ本だが、今でも秋山兄弟と日本海海戦の描写が思い起こされる。
歳を取るとはこう云うことか。今朝何を食べたかさえも憶えてはいないのに、昔のことはつい先ほどのように思い出されるのであった。
「そうだ。三笠公園に行こう」
思わずわたしは細君に告げていた。
そして15分ほど待って三笠公園循環バスに乗り込む。
う〜ん。やはりわたくしめの文体、格調こそないがノリだけはいい。
次回「後編」は戦艦三笠の記事をアップロードしよう。
乞うご期待!
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