<2014年8月11日 ウェールズ・スリン半島・ トレイッル・カイヤリにて>
 小高い山の頂上付近に数多くのストーンサークルが集まっている。ストーンサークルというと有名なストーン・ヘンジやカッスル・リグのような円形列柱群を想像しがちだが、上記の写真で見る通り大小の夥しい石を円形に積み上げた、ヒルフォート(丘砦)とよばれる古代の軍事要塞の跡だ。こうしたサークルが何十も集まって外側をやはり石を積み上げた外郭壁で囲い一つのヒルフォートを形成している。Google Earthの上空からの写真で眺めると、何だか古代人の足跡か巨大な仏足石かゾウリムシのようにも見える。ここは交通の便も悪く観光客はまず来ない。ここが遠いむかし戦いの最前線の砦であったことが、信じられないくらい本当に長閑なところだ。麓の駐車場から長くなだらかなフットパスが続き、その後一気に300m以上の高低差をひたすら登る。頂上までは一時間強掛かりちょっとした山登りだ。だが頂上辺りに広がるのは360度パノラマの絶景だ。僕はこの頂上から眺めた風景がすっかり気に入って友人宅に寄るたび二度登った。行く度に新しい発見がある。たぶんかつてここを訪れた日本人は数えるほどしかいないのではないか。当然ながら今はそこに住む人もなく、ただヒースの花やベリー類や低木性植物や、日本ならば高山植物に含まれるような小さな花々が咲き誇っていた。頂上に着くと登って来た方向とは反対の方向からの結構な風が山裾から吹き上げてきて、着ていたジャケットの裾をはためかせ、すぐ傍に立つ妻の黒髪が僕の頬をさらさらと擽り薙いでいった。シャンプーと野の花と草と土と潮の香りと、現代といにしえの入り交じった複雑で、それでいて何とも馥郁たる香りがした。

 10日からずっと微熱が続いている。小生基礎疾患を持つ身で些か気になった。しかし重症化しやすい人の相談の目安は風邪の症状があるということになっている。体温はこの間ジェットコースターの如く35.1度から37.5度の間を行ったり来たりを日々繰り返している。しかし喉の痛みこそあれ、咳はあっても咳き込むことはない。何だか微妙だ。

 妻がその様子を見て「船橋市は保健所じゃなくて専門の感染症センターがあるから繋がりやすいって聞いたよ。電話してみたら」と言われた。

 電話をしたら一回目ワンコールで繋がった。