<北斎の『富嶽三十六景』に出てきそうな構図だよね>


 橋を渡り終え、再び富士に目をこらす。

 花見川の海に突き出た突堤が、いい具合に目の前を横切って、まるで影絵を見ているようだ。

 

 左端の遠く対岸のほぼ平坦に見える暗い陸地は三浦半島で、

 そこには横須賀辺りの街々の灯がゆらめいて見えていた。

 三浦半島の後背にほぼ重なるように小高く見える少し灰色がかった山の端の連なりは、

 三浦半島から相模湾を隔てて遙かに遠い伊豆半島の山々のシルエット。

 そして画面右端に見える富士山とその手前の丹沢山塊は実に堂々としている。

 横浜の街の灯はずっと右の方にありこの画角内には写っていない。