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久し振りに文豪の小説を読む [U3の独白]

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漱石の「坊ちゃん」をほぼ三十年振りに読んだ。

 十代と二十代に読んだ切りだから若い頃の読後感と今こうして読んだ後の感じ方は大分違う様だ。

 どう違うのかと謂えばその置かれている状況や環境が若い頃とはまったく違うという事に起因しているのだろうと思う。そしてどう感じたのかと謂えばとても身に摘まされてしまったという事であった。ひと言で今のわたしの気持ちを表すとしたならば・・・

 「坊ちゃん」はわたしだ!

 その一言に尽きるのであった。

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 爽やかさはまったくない。寂寥感や切なさやるせなさが募るばかりだ。
 この歳になって若い頃より感受性が敏感になり、あるいは一方で鈍感になり、そして心が揺れ動いている。若かりし頃よりも。
 人間が出来ていないのかも知れないけれど今の世の中は齢を重ねてきた者にも何度も試練や災難が降り掛かる世の中なのかも知れない。そう思える今日この頃です。

 この「坊ちゃん」を書いた夏目漱石の享年よりも四年も多く生きているわたしだが年を取れば年を取る程懊悩は深くなるばかりだ。漱石は三十代から度重なる神経症や胃炎に悩まされていた。それは私生活を含めた様々な問題に対して漱石の感受性があまりにも鋭敏であったが為の様に思えてならない。漱石の直接の死因は胃潰瘍部からの大量喀血(出血)だが懊悩が寿命を縮めてしまったといえなくもない。

 翻って今のわたしはどうだろう。名もなく何の足跡も残せていないわたしには人に誇れるものは何もない。持ち前のバイタリティーも影を潜めてしまった。この頃は人付き合いも億劫になって来た。だから人間関係も公私ともにうまくいかない事が多い。

 いまわたしの懊悩は尽きる事がない。存外丈夫だったのは体の健康でここ数ヶ月続いた仕事での激務(毎月の労働時間300時間近く3ヶ月)も乗り越えてしまった。腰椎間板ヘルニアの再発もなかったし、糖尿病の血糖値コントロールもうまくいっている。しかし心の有り様が体の健康にいつ悪影響を及ぼさないとも限らない。悩みはそれ程深刻だ。

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 夫婦とはおかしなもので片割れが不調な時もう片方は元気だったりする。妻はわたしとは正反対の性格で極めて社交的で社会との接点も多い。わたしが仕事メインでそれ以外の付き合いが希薄なのに対し妻の交際の範囲は実に広い。妻も落ち込む事はあるがそう長く続く事はない。たぶん切り替えが早いのだと思う。
 それに比しわたしはひとつの事を長く考え続ける傾向にある様だ。それがけして解決を見ないと分かっていてもいつまでも考え続ける。性格だと云ってしまえばそれまでだが損な性格ではある。他人様(ひとさま)はわたしを強烈な個性や性格の持ち主だと思って居られる様だがそれはわたしの表だった一面に過ぎない。母はわたしを人一倍優しい性格だという。本当はとても弱い人間なのかも知れない。妻はわたしを見た目に依らず繊細だという。しかしそれが本当ならば極めてアンバランスな繊細さというべきであろう。

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 大勢の中にいても、
 親しい人と一緒でも、
 一家団欒のときでさえも、
 心がそこに無く仮面の中に沈潜している。
 締め付けられる様な鬱屈した思い。
 得体の知れない重圧感。
 このところ心が晴れる事がない。

 この孤独感と孤立感は

 いったい何処から来るのだろう。

 『坊ちゃん』を読んでふと思う。

 


nice!(84)  コメント(17) 
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コメント 17

なかちゃん

坊ちゃんは、かなり昔読んだような気がしますが、自分でも呆れるくらいに
忘れていますね ^^;
ボクも他人様からは本来とはまるで違う性格に見られています。
明るいとか、社交性があるとか…本来とは違うんですがね (><)
まぁ、仕方がないから思われている性格の男を演じ続けているんですが、
夜になると悩んでしまうこともしばしばです (^^)

by なかちゃん (2010-02-14 08:57) 

とりのさとZ

文春文庫に「うらなり」という小説があります。「坊っちゃん」に出てくるうらなりを主人公に書いたものです。その後、山嵐やマンドンナたちがどう生きたか、そして、うらなりは・・・。私は「坊っちゃん」そのものはあまり好きではありませんが、うらなりなどのその後は気になっていました。
by とりのさとZ (2010-02-14 12:32) 

MANICAT

月300時間は数年前の私も同じくらいの
時間仕事をしていましたが、気が張って
いる間は良いですが緩んだときご注意を。
by MANICAT (2010-02-14 13:04) 

pace

性格に損も得も無いと思っています
自分が思う自分像と他人が思う自分像
そのギャップが人生かもしれない
本は人生で3度読めといわれるそうな
その時々で揺れ動く自分の鏡
by pace (2010-02-14 15:22) 

七色音

何かを得る前触れかしら・・・。
ある時 すーっと霧が晴れるような、でも明日かもしれないし明後日かも、一ヵ月後かも・・・。でも・・・
必ず晴れるって想っているから。無理をした後は体をいたわってねぇ♪ 坊ちゃん 読んでみよう・・・。
by 七色音 (2010-02-14 16:11) 

たいへー

年を重ねていくと、だんだん叱られる事が少なくなってきて、
自分を見つめなおす機会が減る。
自己分析できればいいのだが、そんな人は少ないでしょうね。
そういう意味で孤独感を感じる事はありますね。
by たいへー (2010-02-14 16:24) 

nyankome

お仕事大変ですね。
お身体に何もないように祈っています。
「坊ちゃん」は学生のときから読んでいません。
また読んでみようかな。
by nyankome (2010-02-14 18:00) 

つなみ

きっと、それぞれの思いが相手に投影されていくのでしょう。
きっと、その時々の思いが自分にも写されていくのでしょう。
ゆーさん、お疲れすぎにならないようになされませ。
心の疲れも体に毒。体の疲れも心に毒。
疲れすぎないように、少し緩めて。
緩め方も思い出せないようだったら、温泉にでも行って。
お時間がなければ、せめてスーパー銭湯でも。
それが無理なら、ゆったりお風呂にでも。
疲れすぎているのを過ぎると、ぐっとお楽になられますヨ。
お大事になされてくださいネ!
ブログの仲間は、みなさん、ゆーさんのこと、気にかけていますヨ^^
ずっと応援しています♪と
りあえず、Valentineなので、チョコでも♪
by つなみ (2010-02-14 21:23) 

枝動

言いようのない孤独感と孤立感は、往々にしてあります。
私の場合は、仕事上だけの付き合い先、TVニュースの政治家・企業の会見・極悪犯罪、様々な場面で日々起こります。
それは、自分の「正義」が彼らの「嘘」を見て、怒りを通り越して虚しさに達して、孤独と孤立を感じてしまうのです。
「教育、教育」とよく言われますが、その不義理は私達50を過ぎた、まともなはずの教育を受けた者がやらかしています。貴様ら、小学校から「修身」や「道徳」を学んできたはずだろう、・・・と。
いつから日本人は、嘘つきになったのだ、・・・と。
by 枝動 (2010-02-14 22:20) 

ハジナレフ

自分から自分は逃げられないですよね。
でも変わることはできる…と人は人事だから人事のように言ってくれるわけですが。
そういうところからの孤独感なら私も持ち合わせております。

そういえば会社に「赤シャツ」な男、います(笑)
by ハジナレフ (2010-02-14 23:04) 

みそぎ。

体も心も健全で有ることが理想でしょうが
なかなか難しいなと思っています。
by みそぎ。 (2010-02-15 12:58) 

単騎

文豪と呼ばれる人達の小説、昔は読書感想文書くために読みましたが最近は読まないですね。
by 単騎 (2010-02-15 22:51) 

吉之輔

こんにちは、漱石の「坊ちゃん」水分前に読みました。
お話を拝読していて、頷いてみたり、チョット歳を取りすぎると
苦笑したりですね。
by 吉之輔 (2010-02-16 14:46) 

mouse1948

こんにちわ。
夏目漱石、若かりし頃好きでした。
「坊ちゃん」もいいですが、私が読んで感動したのは「こころ」です。
by mouse1948 (2010-02-16 15:57) 

momotty

腰大丈夫ですかっ??
最近、blog更新されておられないので
心配していました。
電車通勤されていましたよね、腰悪くしないようにしてネ(^J^)
by momotty (2010-02-17 09:51) 

吉之輔

今日は、ご訪問&コメント感謝です。私のブログにコメントの
お返事も載せていますので、よろしければ。
先ずはお礼まで。今後ともよろしくお願いします。
by 吉之輔 (2010-02-17 18:34) 

モモパパ

うん十年前に読んだどころかここ数年の小説さえすっかり忘れて同じ本を2〜3冊買って、挙げ句に半分近く読んで気付きました><
by モモパパ (2010-02-22 23:00) 

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