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今そこにある危機(中) [随筆]

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 悪魔は天使の衣を纏って我々の前に現われる。第二次安倍政権はそうして始まった。

 平和の中に暮らす者は平和の有難みを意識していない。それは良い事なのかもしれないが有難みがわからないことは恐ろしい。何故なら戦いの恐ろしさを知らないことが容易に地域紛争や戦争を誘発してしまうからだ。ネトウヨは「め〇ら蛇に怖じず」の典型である。

 病気を理由に辞任した前回の失敗を自民党総裁に返り咲いた安倍晋三代議士はけして忘れていなかった。だから日銀を巻き込んでデフレ脱却・景気回復という国民が一番待ち望んでいたアベノミクスと称する政策(というよりも単なるイメージ)を掲げて政治の表舞台に再登場したのだ。しかしこの経済政策は劇薬で中和剤やカンフル剤は一切ない。今のところ低所得者に厳しく富裕層に甘いといわれているが実はそれは誤りだ。

 いずれワーキングプアは富裕層にまで広がるだろう。 

 絶対的権力を持った時為政者は暴君と化す。古今東西を問わずこれは常識である。

 安倍政権の持った「絶対的権力」とは衆参両院での圧倒的過半数を占める政権与党議席数の事である。ねじれ国会解消を国民が望んだというがそれは安倍首相の口車に乗った有権者が大勢いたという事だ。わたしは「ねじれ結構」と初めから主張している。過度の権力の集中は横暴や腐敗を招くと当初から主張している。一年後二年後の自分達の生活と国際関係特に近隣諸国との関係が改善されているかといえばわたしの答えは「NO」だ。増税に次ぐ増税、近隣諸国との敵対で何が生み出されるのか?・・・それは不協和音と混乱でしかないのではないか。

 「日本を、取り戻す」というスローガンや「戦後レジュームからの脱却」とは実は好戦的なかつての日本に立ち戻ることを意味していたのに何故我々は気づかなかったのだろう。それが我々が思い描く「美しい日本」などである筈がない。安倍総理が思い描く「美しい日本」とはきっと桜花の様な散り際が良い特攻隊的精神土壌の再来なのだろう。選挙公約ではおくびにも出さなかった昨今の提出議案やら法案から察すればそうとしか思えない。純粋な前途ある若者を国家権力の名の下に明治以来どれだけ死なせて来たのか安倍総理は本当に分かっているのだろうか。

 そんな安倍総理が掲げた「アベノミクス」で本当に景気は良くなったのだろうか?

 景気指標である株価は1万4千円台を行ったり来たり2万円台はいつの事になるのやら?

 社会を不安定化させる非正規雇用を減らし雇用を安定させる提言をした事があるのだろうか?

 次々と打ち出される増税に低所得層は果たして耐えられるか。

 女性の雇用を増やすという名目で配偶者の扶養控除を廃止したら一体どうなるのか?

 それだけではない。経済政策以外に目を向ければ安全保障に関わる政策の大転換を図ろうと画策しているのは明らかだ。安倍総理が次に目指すのは間違いなく憲法改正である。九十六条の改正の動きは次に続く憲法九条の改正を視野に入れたものだ。集団的自衛権は国会の審議を経ては米国の要望に間に合わないので国民が付託もしていない憲法解釈を変えて内閣だけで閣議決定してしまうという荒業師振りである。国民の負託は国会の議決による法案の成立以外に王道はないと思うが閣議決定のみでそれを遣ろうとしている。安倍晋三という男は本当にリベラルなのだろうか?それとも海外での評価が固まりつつある右翼政治家なのだろうか?

 与党の衆参両院の議席数がともに圧倒的過半数になると本当に何でも出来てしまう空恐ろしさを今頃になって気づいた方も多いことだろう。

 どうも安倍政権の考える積極的平和主義とは突き詰めて考えれば日本の敵国と見做す国家に先制攻撃をして禍根を断つという論理が根底にあるのではないか。そう思えてならない。国家安全保障戦略の文面を見る限り、地域の安定を図るために積極的に関与していくという意の文言は、不安定要素を日本自らが積極的に解消していくことを差しており、それには平和と程遠い武力を以て解決することも含まれているのだ。だからこその憲法九十六条と憲法九条の改正なのである。

 そしてそれはまぎれもなく軍国主義の再来である。自民党や右寄りの有権者は軍国主義には当たらないと言うだろう。しかしわたしは確約されても信じはしない。初めから軍国主義ですと大手を振るって登場する政治家など存在しない。

 冒頭のわたしの言葉をもう一度眺めて欲しい。柔和な笑顔の底に何があるかは定かではない。

 安倍総理が目指すのは軍事大国への道以外の何ものでもない。集団的自衛権が行使できるようになっても米国の軍事力は低下しそれと反比例するように日増しに中国の軍事力は増大している。そして今後もそうだろう。その中で遅かれ早かれ出てくるのは間違いなく自前の軍備増強だ。集団的自衛権で米国と共同で中国と対峙しようと図ったがその米国が及び腰と来れば、なら自分たちの安全は自分達で確保するという結論になるのは火を見るよりも明らかなのではないか。そして強力な武器を持つ者は必ずそれを実際に使わずにはいられなくなる。

 という訳で集団的自衛権の先にあるのは紛れもなく軍事大国への道だ。中国を脅威と考えあくまでもそれに対抗するという考えを捨てなければ軍備増強以外に道はないのだ。オバマ大統領が尖閣諸島は日米安保条約の第5条の範囲だと明言すれば中国との対立は決定的になることはあっても関係が改善されることはないだろう。それと付随していずれ米国は日本のGNP比の軍事費用が少ないと言って来るだろう。米国議会は日本有事の際に米国が集団的自衛権を行使するならそれ相応の日本側の負担を求めてくるのは明らかだ。その答えが自衛隊の軍備増強なのだ。

 確かにわたしは中国も韓国も嫌いだ。特に韓国は大嫌いだ。しかし自分の感情と現実の対応は同一ではない。理不尽なことは糾さなければならないから韓国の遣り口を批判をしているが、国交断絶などということは考えていない。際限のない敵対感情や国交断絶などという考えを持つ事は危険極まりないと思っている。わたしは思うのだけれど、多くの日本人はより良き外交関係を築くためにフェアで対等な隣国との関係を持ちたいと願っているのではないか。

 <つづく> 

 

 


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コメント 10

Silvermac

すこし拡大解釈のように感じます。
by Silvermac (2014-04-25 06:55) 

たいへー

新しい事を始めれば、良い人も悪い人も出来るからなぁ・・・
by たいへー (2014-04-25 07:47) 

なかちゃん

個人的に中韓は大嫌いです。
元々ではなく現在の両国のやり方が許せないから…ですけど、とにかく
大嫌いです。
ただ、国としてはそういう訳にはいかないのでしょうね…

by なかちゃん (2014-04-25 11:38) 

U3

☆Silvermacさんへ
 あり得ない事はあり得ないのでわたしは最悪のシナリオを想定しています(笑)
by U3 (2014-04-25 12:49) 

U3

☆たいへーさんへ
 政府が国民の過半が納得する方向を指し示せれば問題がないのですが・・・。
by U3 (2014-04-25 12:51) 

U3

☆なかちゃんさんへ
 素人が考えても外交は難しいですねぇ。
by U3 (2014-04-25 12:53) 

くまら

坊ちゃんがやろうとしてる事、おっしゃる通り
政治に無知な私にも、戦前の大日本帝国を作ろうとしてるように見えてなりません。
by くまら (2014-04-25 23:38) 

U3

☆くまらさんへ
 くまらさんのお考えは大概の日本人に当てはまる安倍政権への危惧そのものです。
 今までどの政党であれ公約が守られた例よりも守られなかった、または実現しなかった割合の方がはるかに多いのです。しかし安倍政権もそうであれば改憲を目指している以上国民の安全保障に関わる重大な事柄なので、仕方がないでは済まされない危惧を感じずにはいられません。
 わたしは戦争を体験していませんが父母や親戚のおじさんおばさんから生々しい戦争体験を直に聞いているのでそんな思いを若い世代にはさせたくないと思っています。
 父は腕の骨折で徴兵検査に合格しませんでしたがその時に出兵した四人の村の若者は全員人間魚雷で帰らぬ人になりました。
 母は学生動員で軍需工場に働きに出て女学校の大勢の級友を空爆で失いましたし、軍需工場への行き帰りに隠れることさえ出来ぬ田んぼのど真ん中で二度米軍の戦闘機の機銃掃射を浴びています。
 戦争は悲惨で恐ろしいのです。勇ましい話をわたしは聞きたくありません。
by U3 (2014-04-26 11:43) 

青い鳥

長い間ご無沙汰いたしました。
お元気なご様子、嬉しくブログを拝見いたしました。
私は4ヵ月ぶりにやっとブログを更新しました。
by 青い鳥 (2014-05-08 23:44) 

U3

☆青い鳥さんお帰りなさい!
本当にお久し振りです。お仕事終わったのですね。
お疲れ様でした。
by U3 (2014-05-09 20:28) 

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