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『贖罪の山羊は反撃する』~其の四 [誤った認識を正す]

ファティマの手5.jpg

<スペイン・マドリッド、スペイン国会上院付近にて>
「ファティマの手」はスペインに限らずヨーロッパでドアノッカーやドアノブになって言わば家の魔除けとして使われているようだが、ファティマの手の発祥元であるムスリム(イスラム)社会では「ハムサ」とよばれている。預言者ムハンマド(マホメット)の娘の一人がファティマであり、イスラム・シーア派では単なる魔除け以上の意味を持っているようだ。前々回ファティマ手の甲には眼があると述べたが、あれが「ハムサ」だ。

 これまで日本で感染者や死者が何故こうも少なかったのかという疑問に、感染症の研究者や臨床医といった自然科学分野の専門家から明確な答えは提示されていない。ゆえに世論は揺らぐ。

 人々がマスメディアやネットを飛び交う根拠のない情報(安心材料)に飛びつき、

「な〜んだ新型コロナウイルスなどインフルエンザと同等程度だったんだ」

 と、思い込みたい気持ちも分からないではない。だが、

 現実には新型コロナウイルスは未だ不確定要素が多くアンコントローラブルだ。

 安心するにはまだ早い。むしろ今警戒心を解くことは危険ですらある。


<2020/07/20 6:45>

 冒頭から追記です。追記以前に読まれた方にはお詫び致します。

 新型コロナウイルスを軽視する人は是非読むべきだろう。センセーショナルなものは何一つないが、今起こってることが良く分かる内容だ。新型コロナウイルスを必要以上に恐れることはない。逆に必要以上に軽視することは被害を自ら招き入れる恐れがある。

 今必要なのは新型コロナウイルスを正しく理解することだ。

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 仮説ばかりで実証データの乏しい学者の仮説などを見て、それをすっかり事実だと信じてしまう人々の愚かさを見るに付け、

「自分の頭で考えることをしない、あるいはそもそも考える頭を持たない人達は、こうした根拠脆弱な思いつき程度の仮説を安直かつ無闇矢鱈と信じて、感染を殊更広げてしまうのだろうな」

 と、暗澹たる気持ちになる。学者とか専門家という肩書きに弱い人達は、そうした「権威」の唱えた言説を、それこそ何ひとつ疑うことなく、安易に信じてしまう傾向が強いように思われる。

 特に自分の欲望や欲求に近いものが眼の前に提示されると、すぐにその団子に喰らいついてしまう傾向が若い世代に多いのは愚かしい限りだ。何故ならその団子は毒入りかもしれないからだ。

 しかもそうした若者特有の即物的で欲望を制御できない傾向が、40代あるいは50代にまで波及、浸食しているのは現状を見る限り明らであるように思われる。

 一番恐ろしいのは「経済を回さなければ日本は駄目になってしまう」という風潮というか雰囲気に呑まれたり踊らされたりして、新型コロナウイルスの影響をことさら軽視することである。

「インフルエンザと大して違いがないんだ」などという虚報に踊らされている現状を見れば、警戒心が確実に緩んでいるのは明らかだ。

 しかし、それだからこそこの情況で良いのか、このまま突き進んで良いのか、一人一人が今一度立ち止まって、経済を回すことのみに傾いている現状を見つめ直す必要はあるだろう。

 ハッキリ言う。このままで何ら有効な対策が講じられなければ、その先に待っているのは間違いなくパンデミックであり、その後に続く死者数の再増加であり、その結果の経済の停滞あるいは破綻のみである。


 日本が立ち直れないほどの衝撃を受けることを日本人であれば誰一人望まない。だが新型コロナウイルスにはその危険性が明らかに存在している。そのことから日本人の過半が目を逸らした時、それがパンデミックを呼び込む契機となるだろう。

 預言しておきます!

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 それこそ毎週毎日新たな仮説や論証や報告が明らかにされているが、それで全容が解明されるかといえばむしろその逆で、新しい仮説は以前の仮説を否定するか矛盾するものとなり、その新しい仮説や臨床の報告例ですらエビデンス(科学的根拠)は得られずいつまでも仮説のまま確定しない。

 それだけならまだしもガセネタも多い。困ったことにそれが一部の学者先生から出て来るケースまで現れて、学者という一種の権威の発言であるが故に、人々がそうした言説に安易に飛びついてしまうことさえ現実に起きている。

 例えば2020年7月17日5:00に、東洋経済 解説部コラムニストの大崎明子氏が掲載した、国際医療福祉大学教授の高橋泰氏へのインタビュー記事がある。その中で提唱された「感染7段階モデル」そのものにとやかく言う積もりはない。だがそのインタビューの中で語られた数々の発言には、多くの問題が含まれているように思える。以下それを明らかにしていこう。

 まずは下記に高橋泰教授のプロフィールを東洋経済のこの記事から抜粋・引用する。なお写真は著作権と肖像権があると思われるので記載しない。

高橋泰(たかはし・たい)/国際医療福祉大学教授。金沢大学医学部卒、東大病院研修医、東京大学大学院医学系研究科修了。東京大学医学博士(医療情報)。スタンフォード大学アジア太平洋研究所、ハーバード大学公衆衛生校に留学後、1997年から現職。社会保障国民会議や日本創生会議などにおいて高齢者の急増、若年人口の減少に対応した医療・介護提供体制の整備の必要性を提言。地域医療構想などの先鞭をつける。2016年9月より内閣未来投資会議・構造改革徹底推進会合医療福祉部門副会長。新型コロナウイルスについて、東京都の専門家会議では年代別対策の提言が取り上げられた。

 これは余談だが、このインタビューで語られた、こうした考えを持つ方が過去に内閣の会議体に加わったり、東京都の専門家のメンバーに加わって、新型コロナウイルスについて提言して、その意見が取り上げられたことに危惧を感じる次第だ。その理由は以下の記述を読めば分かるであろう。

 話を元に戻そう。

 冒頭にファクト(事実)に基づいてモデルを構築とある。だがここで述べられいるファクトなるものの正体はただの数値であり、そこから何ひとつ読み解いていないのは問題だ。

 数値には単にその値が示す以上の意味がある。その意味を引き出してこその、科学者であり医療の専門家といえるだろう。しかし今回の仮説は取り上げた数値や現象あるいは統計やグラフを表層的になぞって構築されたものであり、それがファクト(事実)となり得ないことは明らかだ。

 更に問題なのはその根拠に乏しい仮説に、多くの人達が安易に飛びついてしまったことにある。こうした安易な思いつき仮説が蔓延する事は百害あって一利無し。害毒を垂れ流すに等しい。ゆえに高橋泰教授にもの申す

 これはファクト(事実)などではなく、明らかにフェイク(偽物)だ。


 こうしたフェイク情報に安直に飛びつき、迎合する永江一石氏なる人物まで現れた。この人物は幾つかの記事を見たがそこに公平な視点はなくいつもバイアスが掛かっている。しかも奇を衒う傾向まである。それゆえに無思慮で即物的ですぐに吠えたがる。まるで躾のなっていないワンコがマテのコマンドを理解できず、目の前のエサに条件反射の如くすぐに飛びつくように。

 このツイートに同調リツイートする軽薄な輩が、夥しく現れたところを見ると日本の将来はあまり明るくない。愚者に未来を託せば亡国の憂き目に遭うだけだ。

 我々人類はまだ新型コロナウイルスのごく一部しか解明していない。その事に気づかず新たな仮説に一喜一憂する愚を覚るべきだ。

 筆者は次々と現れる仮説や臨床データに踊らされたことは一度もない。釈然としない記事や気に掛かったデータには、必ず一通り目を通してその内容を検証してきた。そして得た結論は冒頭にあったように、

『新型コロナウイルスは未だ不明で制御不能(アンコントローラブル)である』

 というファクト(事実)だけだ。

発表されている数字はあくまでもPCR検査で判明した「PCR陽性者判明数」であり、正確には「感染者数」ではない。もちろん「発症者数」でもない。

 因みに高橋教授はPCR検査不要あるいは検査拡大には反対の立場にあるらしい。

 このインタビュー記事の冒頭にある、こんな当たり前のことに今更のように気づいて感動する稚拙な思考回路とバカさ加減。ゆえにその言説まで鵜呑みにしてしまう、一部の若者あるいは壮年の単純さにはホトホト呆れてしまう。賛同のリツイートコメントを見て「こんな当たり前のことに感動してコロッと騙されちゃうのかよ」と呆れかえり、さらに記事を読み進めていくとその下にはこう書かれていた。

もちろん「発症者数」でもない。特に若年者の場合、PCR陽性者が発症する可能性は低く、多くが無症状・軽微な症状で治ってしまう。また「数十万人が死ぬ」といった予測は、新型コロナウイルスについての前提が間違っていると考えている。

 この「数十万人が死ぬ云々」発言の裏にあるのは、北大の西浦教授と京大の山中教授の発言に対する皮肉か反証のつもりなのだろう。こうした予測は前提条件が間違っていると書かれているから、その前提条件なるものがどこにあるのか読み進めていくと、1ページ目の末尾にこう書かれてあった。

日本も含めた各国でそれぞれ数十万人死亡するというような、当初流布された予想は大きく外れた。その原因はインフルエンザをベースとしたモデルを使っているためだと思われる。2つのウイルスには大きな違いがある。

「・・・ためだと思われる」とあるようにこれは推測に基づいた言説だ。問題はこの推測をいつの間にか確定された事実、つまりファクトであるかのように高橋教授自身が一人歩きさせていることだ。これは言いっ放しでその根拠も示さず、学者あるいは専門家としての責任を持った発言とは言い難い。

 しかも高橋教授の言説は最後まで仮説に次ぐ仮説のオンパレードで、その元となる根拠が脆弱である。というより明らかに虚実を混ぜたフィクションの上に構築されたものだ。

 上記の、その原因はインフルエンザをベースとしたモデルを使っているという主張にしてからが、事実に基づいていないのだからフェイクだとかフィクションだとか指摘されても仕方がないだろう。

 コロナウイルスは分かっているだけで現在7つある(最近中国の研究で1つ新たに見つかったという報告もある)が、そのうちの2つが俗に言う「風邪」のコロナウイルスで、あと2つが「インフルエンザ」で、残りの3つがそれぞれ「SARS」、「MARS」、「COVID−19(新型コロナウイルス)」である。

 世界の臨床医の頭にあったのはインフルエンザではない。まず特性を比較・対比したのは、新型コロナウイルスにもっとも近いとされるSARSであり、その次にMARSだ。インフルエンザを基準(ベース)としていたには違いないが、それはあくまでも「参考基準」という意味だ。例えば「インフルエンザに対して致死率が何倍」といった、「比較の基準」としていただけでそれ以上の意味はない。そうした実態を事実を無視して語ること自体、説明がおざなりであり言いっ放しに近いことからして、科学者として無責任だと断じるしかないだろう。

 さらに根拠のない曖昧な記述は続く。

新型コロナウイルスは、初期から中盤までは、暴露力(体内に入り込む力)は強いが、伝染力と毒性は弱く、かかっても多くの場合は無症状か風邪の症状程度で終わるおとなしいウイルスである。しかし、1万~2.5万人に1人程度という非常に低い確率ではあるが、サイトカイン・ストームや血栓形成という状況を引き起こし、肺を中心に多臓器の重篤な障害により、高齢者を中心に罹患者を死に至らせてしまう。

 この中に伝染力と毒性は弱くとあるが、この「伝染力」とは何かと言えば、つまり感染力、言葉を変えて言えば「暴露力」に他ならない。この発言の冒頭で暴露力(体内に入り込む力)は強いと述べているのに、話の前後で記述に矛盾が生じており、これでは完全に自家撞着に陥っている。

 しかも1万~2.5万人に1人程度という非常に低い確率という発言も、何に対してそう言っているのか不明であり信用が置けない。単に各国の総人口に対してその程度なのか、罹病者の中からその程度死亡する、ということなのか明確ではない。だからそれが何に対してどういう基準を以て非常に低い確率だと結論づけたのか誰一人判断できない。

 それに高齢者や基礎疾患のある者が死に至る確率はもっと高いはずである。日本は、重症化しやすいとされる高齢者の、人口に占める比率は世界一である。つまり世界一の高齢化社会で、しかも2位のイタリアと比較してもダントツの高齢化社会だ。

 それだけではない。糖尿病患者やその予備軍は2000万人とも言われ7人に1人がその対象だ。人工透析が必要な人は世界で2番目に多い。呼吸器障害、循環器障害患者も多い、世界に冠たる『疾病罹病大国』である。

 その日本で、新型コロナウイルスは大したことがないという、誤ったメッセージを発信することが正しい判断だとはとても思われない。

 更に言うならばサイトカイン・ストームや血栓形成という状況を引き起こし、とあるが、新型コロナウイルスが、サイトカインストーム(免疫暴走)を起こすメカニズムについて言及することは極めて重要であるはずなのだが、それすらもなおざりに1行にも満たない記述で語られていることはとても看過できない。

 何故なら高橋教授が新型コロナと比較対比しているインフルエンザでは、ワクチンも特効薬もあることから、サイトカインストームはほぼ起こり得ないことが分かっているからである。この違いは軽く扱われてよい事柄ではない。

 サイトカイン自体は免役システムだから通常の感染症で発現するのは問題ない。しかし、新型コロナウイルスの感染過程では特異な発現の仕方をしてT細胞が大量に生産され、それがサイトカインストームとなって、ウイルスにではなく自らの身体を攻撃してまうことが分かっている。肺だけではない。全身にサイトカインストームは同時多発的に発現するのだ。肺の中では血管から染み出た血液成分である出潤液で肺胞内を満たして呼吸困難を引き起こし、さらに全身の血管内壁に傷を付けて異常な量の血栓を生じせしめ、各臓器の中でも血栓が発生し、やがて多臓器不全に陥り、最後は窒息ないし心筋梗塞あるいは脳梗塞を引き起こして死に至らしめるのだ。

 これがインフルエンザで起こり得るかと言ったら断じて否だ。

 高橋教授によれば罹っても多くの場合無症状という前提条件はつくものの、この症状の重篤性と特異性からして、果たして新型コロナウイルスが風邪の症状程度で終わるおとなしいウイルスだと言えるのか。高橋教授のこうした見解は他の臨床医の見解とは大きく異なるものであることは明らかにしておこう。

 それと、重箱の隅を楊枝でほじくる様で申し訳ないが、

このウイルスの性質の特徴は、自身が繁殖するために人体に発見されないように毒性が弱くなっていることだ。

 という発言は正確な記述ではない。このウイルスの特徴は自身が細胞内に入り繁殖するために、受容体の形を変容させて免疫システム、あるいは既に獲得している他の感染症によって形成された抗体に感知されないように、極めて巧妙なステルス性を身につけていることにある。だから感染した人体の免疫システムはウイルスを感知できないし、従ってウイルスを攻撃できないし、時間を経ても獲得抗体も出来ケースが多いのだ。

 更に言えば一旦獲得した抗体の持続性にも疑義が発生している。3ヶ月も抗体が保たないという研究結果が発表されている。陽性反応の出た者のうち3割は罹病しても抗体がまったく出来なかったとも以前から言われている。各国でワクチン開発は急ピッチで進んでいる。だがその有効性に危険信号が出ていることは明らかだ。そんな実情からして、

 これが果たして毒性が弱くなっていると言えるのか。答えは「NO」だ。

 反論はまだある。だが本筋の話をするのでこの話題は次回まで持ち越しとしたい。

 因みにこのインタビュー記事は6ページあるがそのすべてのページに反論がある。

 あらゆる学説は仮説から始まる。ゆえに仮説を立てなければ論証は出来ないが、その仮説の論拠が曖昧であったり、あるいは誤謬に基づいたものであったとしたら、自ずと出て来る答えが正解とはなり得ないことは明らかだ。

 筆者は高橋泰教授の提唱している「感染7段階モデル」に特別言うことはない。だがそこに書かれている数々の言説やファクトなる数値や、その論拠にはそうした見解を持っている。

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 この様に多くの論説は未だエビデンスを得られておらず、中には一般受けは良いが上記のようにファクト(事実)に基づくと宣言しておきながら、現実には仮説や前提そのものがフェイクで、非アカデミックな論説まで現れる始末だ。

 だがあらゆる論証の中で唯一揺るぎない仮説(主張)が存在する。

 筆者も含めた人文科学あるいは社会科学的立場の人達から出た『高齢者が感染を恐れて外出を自粛している』という死者が少ない理由と、元々日本は『非接触社会』つまり日常生活でハグやキスなどしない非スキンシップ社会』だったという感染者が少ない理由の2つの説だ。

 これらは東洋人の特有の心理や生活習慣あるいは慣習に由来するものであり、人文科学的要素の強い要因であるが限りなく真実に近い。誰でも少し考えれば分かる本当に拍子抜けするほど単純で明快な結論だ。

 だがこの仮説だけが唯一死者や感染者が少ない根拠となり得ているのは確かだ。

 それだからこそこの2点を抑えればウイズコロナ時代を生き抜くことは可能だ。

 一部の臨床医が主張している日本人や東アジアの自然免疫力が高いという説も根拠は薄く、BCG接種が大きな要因とも思われない。況してや新型コロナウイルスは、インフルエンザよりも毒性も死亡率も低いというのは、事実を歪曲した暴論でしかない。

 自然免疫説は「数値」という不確かな統計上の要素(彼らはそれを「ファクト(事実)」と呼ぶ)から推し量って単純に仮説を立てただけで、欧米人の自然免疫より日本と東アジア人の自然免疫の方が100倍も優れているというエビデンス(科学的根拠)はまったく得られていない。

 なお100倍という数値は、彼らが日本の致死率が欧米の致死率と比べて100分の1だという主張あるいは根拠としている数値の逆数だ。

 現実には仮説のままで事実とはなりえない彼らの主張だが、それを証明するには(逆説的に)欧米人の自然免疫は、日本人や東アジアの人々に比べて量的に圧倒的に少なく発動される、あるいは免疫力自体が劣っているということを証明しなれなければならないが、今のところ仮説あるいは空想の域を出ていないというのが現状だ。つまり現時点でそれらを証明するものがない以上ファクトたり得ないのは明らかだ。

 BCG説にしても当初はBCG接種を以前より実施していた南米で感染者が少なかったのを理由にしていた筈だ。同じくBCG接種をしている日本や韓国も少ないというのは、その仮説を見た日本の医学者の後付けの理由にすぎない。しかしその後の南米の感染爆発の情況を見れば、その仮説自体が成り立たないのは明白だ。

 そればかりではない。新たな死者の減少に関しては日本だけに限った話ではない。世界共通の傾向だ。しかし死者が発生する理由も減少している理由も筆者なら証明できる。医療の専門家でも臨床医でもない社会科学的立場ゆえに立証できるのだ。言い換えれば柔か頭だから正解を得られやすいともいえる。

 因みに筆者は単に「論証好きな一介のオヤジ」であり肩書きなどは一切ない。

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 死者が増える要素(理由)は2つだ。

 一つめは、当初はこのウイルスに感染することの恐ろしさを知らなかったので防疫措置を殆ど取らなかったからだ。従ってこのウイルスの恐ろしさを身を以て体験した国々では、経験から学んで以後新たな死者の数は減少の一途を辿っている。

  二つめは一旦医療崩壊を引き起こせば必ず感染爆発が起こり、死者の数も感染者に比例してうなぎ登りに増えるだろうということだ。このうなぎ登りの意味するところは、致死率が感染爆発を起こした欧米の国々並みになるということだ つまり10万単位になることだって可能性としてあり得ないことではない。

 その後何も対策を取らなければその増加は1週間毎に倍に増えていくとされている。だが一旦医療崩壊が起きパンデミックを誘発させれば感染者の数も死者の数も倍々ゲームで終わるかどうかさえ怪しい。

 皆も知るように日本ではこのウイルス感染の恐ろしさを身を以て体験したとは言い難い。だが一つだけハッキリ分かったことがある。それは日本人や東アジアの人々は未知のものに対して甚だ臆病だったということだろう。臆病という言葉が適切でないとしたら警戒心が人一倍強いと言い換えてもいい。

 これが日本や東アジアで感染者や死者が少なかった要因の一つだ。

 ただし、今後も欧米のようにはならないという希望も微かにある。二つ前の記事でツイートした、山中教授と西浦教授の対談の中で西浦教授が言っていたことを思い出した。


 理由は定かではないが北大の西浦教授によれば、クラスター発生後の2次感染者の数が圧倒的日本は少ないという。

 欧米では一旦クラスター感染が起これば、1次感染者が引き起こす2次感染者の数は、日本の2次感染者の比ではないという。それこそ爆発的という表現がピッタリくるが、一方の日本では1回のクラスター感染で1人が引き起こす2次感染者の数は最大で5人程度だ。

 そうした事実が歴然としてあって、その原因を究明することはこれは極めて有意義だと思われる。現在、西浦教授とその事例を共同で研究している人達は、この原因を臨床的に検証中だという。

 現在では日本循環器学会によるこのYOUTUBE映像を見ることは会員登録しなければ叶わないが、西浦教授がその原因としてこの映像の中で仮説と挙げていたことはとても興味深い。

 何故2次感染が少ないのか、あるいは実効再生産数が想定したよりも高くならないのかを探ったところ(日本人あるいは東アジアの国々の人達に共通して存在するのは)、従来の季節性コロナウイルス(つまりインフルエンザ以外の通常の風邪)に対する抗体あるいは免疫システムが誤作動して、新型コロナウイルスに対抗してそれが有効に働いているということらしい。

 山中教授はファクターXに一つとして、東洋人の遺伝子が関係しているのではないかと考えていたのだが、原因はそうではなかったということだ。西浦教授等の研究が進展し、原因が明らかになることを期待したい。

 この実例は高橋教授の唱える自然免疫説などと同様に現時点ではエビデンスが得られてない。だがそれが高橋教授によるファクターに基づかない仮説ではなく、西浦教授とそのメンバーによって実証されたファクトに基づいてるからこそ、その真実性と検証には大いに期待を持てる気がする。

 というより高橋教授の頭の中で考えた自然免疫説など完全に一蹴している。北大の西浦教授が、臨床の最前線にいたからこそ得られた、貴重な実例と言うべきだろう。

 ここには明らかに感染者と死者が少ない理由と原因の一つがある様に思える。

 本筋に戻る。

 日本国内これまでに死者が1000人を超えていないことを理由に、これからも死者が数千人単位にしか達しないだろうという予測を高橋教授は(正確には「3800人程度」と試算)しているがそれには根拠がない様に思える。

 何故なら自然免疫で98%が治るという、ただの数字合わせで得られた仮説を元にそれが論じられているからだ。それも日本とベルギーの10万人当たり死者の数から割り出して、さも根拠があるように論じているが、実のところ情況によって幾らでも変わる変数と要素によって、現時点の10万人当たりの死者の人数など今後幾らでも変わってしまうので、何ひとつ根拠にはなり得ないし気休めにもならない。

 つまり幾ら数字を捏ねくり廻してみたところで、不確定要素があまりにも大きいがゆえに、それは仮説で終わり定説にはなりないだろうと思われる。考えて見れば分かることだ。日本で10万人当たりの死者が0.9人、ベルギーで82人という高橋教授の持ち出した根拠としている数値は、確定値ではなく現時点での暫定値だ。その暫定値が今後も変わらないと果たして言えるだろうか。

 それは取りも直さず、果たしてファクトといえるものだろうか。確かにこの数字は事実には違いない。だが確定値ではない暫定値という不確かな存在だ。それゆえに不確定要素があまりにも大きく、正確な致死率は算出できないし数式化は殆ど不可能だ。従って確実ではないという意味でまったく以てファクトとはなり得ない。

 そんな不確かな仮説を論じるより、人文科学的に検証し論じる方が今後の感染対策も経済財対策も立てやすいし遙かに有益だと思える。因みに経済は人文科学の範疇だ。

 あとは医療現場における臨床の実践と分析と検証によって得られた治療法と、早ければ来年早々というワクチンあるいは特効薬の登場を待つしかない。だがそれよりも、すぐにでも実行可能な人為的な対策を取った方が、遙かに良い結果が得られるだろう。

 日本では慣習や習慣といった環境が『非接触社会』であったが故に、感染者数が当初予測したよりも少なかっただけで、警戒心を解き気の緩みが出ればいつ感染爆発が起こるか分かりはしない。特に第1波で予想外の軽微な人的被害で切り抜けたことが、第2波では裏目に出る恐れがあることには十分留意しなければならない。

 恐いのは慢心だ。もしそうなったら、「高齢者の外出自粛」も「非接触社会」も形骸化し、その先に待っているのはパンデミックのみだ。現実にも感染者が日増しに増えているのはそうした警戒心が緩んだからこその結果だ。

 マスク着用、3密忌避、手洗い励行、ソーシャル・ディスタンス厳守。街中を歩いていて、これらが厳密に守られているとは筆者にはとても思えない。おしなべて日本人の気は緩んでいる。

 現時点で分かっている事を列記しよう。

1.日本では特殊な状況あるいは条件でも揃わなければ、スーパー・スプレッダー(一人で夥しい数の人々に感染させてしまう個体)が現れることはない。であれば小さなクラスター感染を、取り零しのないようにこまめに拾っていけば、感染爆発を防げる可能性がある。ただし地道な作業となることは間違いない。

2.当初より日本は入出国規制も遅れ、当然ながら中国と韓国からも米国からも欧州からも相当なウイルス入っているのは明らかなので、日本で感染を広げている新型コロナウイルスは弱毒株という説は到底成り立たない。ゆえに日本で感染者や死者が少ない理由は他にある。

3.日本人は感染しにくいからだという説が最も多いと思うが、その根拠は今のところ何ひとつ証明されていない。遺伝的要素がないとは言い切れないが現時点でまったくエビデンスは得られていない。ゆえにファクターとはなり得ないし現時点では単なる仮説にすぎない。

 しかし医学的見地から離れれば揺るぎないファクターは幾らでもある。

 中国以外で最初に感染爆発が起こったイタリアで、高齢者がバタバタと死んでいった光景を目の当たりにした世界の高齢者は、初めてこのウイルスの恐ろしさを知った。そのことのインパクトは絶対的と言えるほどの衝撃を以て人々に受け取られたのは想像に難くない。

 その結果高齢者は表に出なくなった。感染爆発を起こしている国を除いて、世界的に新たな死者の発生が少なくなっている理由は医学的に証明されなくてもそれで十分説明が出来る。

 そして感染力や死亡に関してもこのウイルスの特性に由来するものではない。感染者と死者が増大したり減少したりするのは全て人為によるものであると断言する。

 ゆえに『警戒心』『死の恐怖』忘れない限り感染拡大は防げる。

 現にその2つの理由で第1波の被害が想定されたよりも遙かに少なかったのだ。しかし、だからこそ緊急事態宣言の解除と移動の自由が宣言されて以降、政府も為政者も国民も皆が皆気が緩んで、感染が拡大の一途を辿っている現状を生んでいるともいえるのだ。

 しかしその一方で、世界の高齢者や基礎疾患のある者は重症化する事と、その先に待ち構えている死への恐れから、接触機会を極小化する事に腐心している。現状(各国の感染状況とそれらを示す数値)はそれを明確に証明している。

 しつこいようだがここで改めて結論を言おう。

 最大の防疫対策は『人為をコントロールする』ことだ。

 この、人為で感染対策のかなりの部分がコントロール出来るという点に気づくことは重要である。なぜなら医学薬学的あるいは防疫学的対応を待たずに、人為であるが故にすぐにでも対策が打てるという点で、即効性でも有効性でも極めて優れていると考えるからだ。

 この点は後ほど改めて説明しよう。ところで経済が大切か感染症対策が大切かという議論があるようだが、その解を下記に示しておこう。

 今の対策が旨く行かない理由はひとえに責任の所在が曖昧になっている事にある。だから為政者も政府職員も専門家も真剣味が足りない。まずは政府や自治体の責任の所在を明確にすることからはじめなければならない。

 経済と感染症対策は二律背反ではなく車の両輪だ。どちらかが動かなくなれば先に進めない。だとしたら、経済を回しながら感染症予防を両立させるという前提に立って、それが両立し得るシステムと有効なインフラを早期に整えるべきだろう。

 しかし新型コロナウイルス感染症対策分科会のこれまでの対応を見る限り、経済寄りの意見が医学的意見を押し除けているのは確かだ。これでは日本の進路を見誤る恐れ大だ。

 だとしたら分科会は「医学・疫学分科会」と「経済対策分科会」の二つに完全に分けるべきだ。それぞれの分科会メンバーを同数とし、決を採り方針を決めるのは西村大臣、それを実施し監督・総括するのは安倍総理大臣という様に、責任の所在を明確にすべきだ。

 つまりすべての責任は西村大臣と、政権を統括する安倍総理にあることを明確にすべきだ。因みに責任を取るというのは命(政治生命でも可)を賭けるということだ。その方針ひとつで人の生き死にが影響を受ける以上当然のことだと考えるが如何。

Written by H☆imagineU3

<つづく>

次回は其の伍(完結編)2020年7月24日記事更新予定。

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コメント 8

Baldhead1010

60歳以上になると、若い時に比べ、免疫力が半分以下に低下するようだから、感染して重症化するはずだね。
お日様を浴びて、身体を動かして、三度の食事を美味しく頂いて、湯船に浸かって血行をよくし、免疫力を高めよう^^

夏場のお風呂はシャワーで済ませていたけど、温めのお湯に数分浸かると、水圧がかかったり血行がよくなったりするから、免疫力向上にはいいらしいです^^
by Baldhead1010 (2020-07-20 04:49) 

U3

Baldhead1010さん おはようございます。
 彗星があんなにクッキリ見えるなんて思いませんでした。素晴らしいです。

 運動はあまりしないけれど規則正しい生活をしているので、基礎疾患のある身ながら健康を保ち得ています。
 6月からお風呂の湯沸かし温度を2度下げて過度に汗を掻くのを防いでいます。入浴後が気持ちが良いですね。
by U3 (2020-07-20 07:08) 

Baldhead1010

ネオワイズ彗星、これから少しずつ暗くなります。
肉眼ではかなり暗いところへ行かないと、見るのは無理と思いますが、三脚に広角レンズを着けたカメラを設置して、Iso感度1600、絞り開放、シャッタースピード1秒ぐらい掛ければ、写るかも知れません。
お時間があれば、暗い郊外へ行ってトライしてみて下さい。
まだしばらくはお月様も月齢が浅いので、月明かりに邪魔されることもないと思います。
位置情報は↓です。
http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/11302_ph200700
by Baldhead1010 (2020-07-20 09:33) 

侘び助

何時もありがとうございます。拝読しても難しい問題です。
唯一出来ることは高齢者ゆえ、非接触のため外出極力自粛し
健康維持に努めます。子供は2人いますがまだ現役・遠距離のため
一人暮らしをし、まだ終活に手を付けていないので健康管理に
努めたいと思っています、稚拙なコメントでごめんなさい"(-""-)"
by 侘び助 (2020-07-20 10:34) 

八犬伝

死者がついに千人に迫ってきましたね。
不味い状況になってきました。
早すぎる「緊急事態宣言」の解除によって
気が緩んでしまいましたね。
GO TO キャンペーンじゃないでしょ
今やらなければならないのは。
by 八犬伝 (2020-07-20 21:16) 

U3

Baldhead1010さん こんばんは。
情報を頂きありがとうございます。
千葉では大多喜辺りでしょうか。それとも茨城か栃木の山間部か農村部辺りでないと無理かもしれません。
by U3 (2020-07-20 22:09) 

U3

侘び助さん こんばんは。
別に恐れることも怯えることもないとは思います。
ただ警戒心を怠ってはならないとは思っています。
感染予防のルールを習慣づけるということでしょうか。
①3密を避ける。
②人と接触する可能性があればマスクをする。
③家に帰ったら1分以上に石鹸で手を洗う。
④うがいをする。(私は帰宅したら「明治うがい薬」で必ずうがいをしています)
⑤場合によっては洗顔石鹸で顔を洗う。(汗をふくために顔を触っていることが考えられる為)
上記5つを手抜きすることなく必ずしています。
by U3 (2020-07-20 22:17) 

U3

八犬伝さん こんばんは。
 クルーズ船を入れるとちょうど1000人だそうです。
 気の緩みが原因であることは間違いないと思いますが、死者がこれから激増するかというと、医療崩壊が起こるというような事態にならない限り、そうはならないだろうという気がしています。
 これは根拠があることで、重症化してもその治療法が出来つつあることをある医療団体のレポートで見ました。サイトカインストームが起こっても心筋梗塞とか脳梗塞とか大動脈が梗塞するという事態にならないよう「血栓抑止剤」を投与するという治療法が、医師や病院間で共有されているようです。それも日本だけじゃなくて世界中で共有されているみたいです。
>GO TO キャンペーンじゃないでしょ
>今やらなければならないのは。
 ご指摘ごもっとも。9月までにインフルエンザと新型コロナを判別する体制を整えておかないと、たぶん医療崩壊を起こしそれを契機としてパンデミックになります。
 そして死者はこれ以上増えないという前提条件も崩れます。何しろ医療崩壊を起こして、パンデミックな訳ですから。
 警戒心を怠ってはいけないと思います。
by U3 (2020-07-20 22:35) 

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