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To Stirling from Edinburgh(エジンバラからスターリングへ) [随筆]

厳しいお言葉.jpg

<安曇野市街の或る古刹の今月の戒めの言葉> 

 う~ん、厳しいお言葉です。

 人にはいろいろ文句を云うくせに自分では遣らない人は多いからこんなお言葉がお寺の山門前に書かれるのでしょうね。

  「他人に厳しく 自分に甘く」

 とはわたしが二十代の頃に冗談めかして話していたモットーですが、現実には自分に厳しく他人には出来るだけ寛容になるように努めて参りました。

 そうは云っても父母から厳しい躾けを受けたものですから三つ子の魂百までの喩えにもあるように時に他人や身内の者に対しても厳しさが前面に出てしまうこともあります。他人の目に余る言動に我慢がならずつい堪忍袋の緒が切れてきつい口調で諭してしまうのです。もちろんそんな時も自問自答はしますし反省もします。

 その時のこころの言葉が

 「じゃぁ、お前はどうなんだ?」 なんですね。

 このこころの言葉に恥じないように事ある毎に自分を見詰め直し戒めています。

 そして自分の過ちはけして忘れないようにしています。

 何故ならこころの戒めを解いたら人は人ではなくなってしまうからです。

 


 

 それではスコットランドから始まった旅の続編です。

 

スコットランド・ローズ.jpg 

 エジンバラ空港から今夜泊まる予定のB&B Minto House まではカーナビ(UKではGPSと言わないと通用しない)のお蔭でそれほど時間をロスしないで行くことが出来ました。まあ当然と言えば当然ですがカーナビも英語ですから操作方法も何も分からず、適当にいじっているうちに目的地のセットとか出来ちゃいまして何とかたどり着くことが出来ました。でもカーナビのアナウンスが英語じゃなくてスコティッシュやゲール語だったらお手上げでした(笑) 

 今やヨーロッパではガソリン車よりもディーゼル車の方が主流でスポーツカーなどの高性能車以外は自家用車だろうが商用車だろうが殆どがディーゼル燃料(軽油)車だ。しかもガソリンはレギュラーばかりで日本の様にプレミアム・ガソリン(いわゆるハイオク)は殆どの給油所で置いていない。その代わり高性能ディーゼル燃料というのは存在しているらしい。しかもUKではガソリンよりもディーゼル燃料の方が値段が高かった。ガソリンもディーゼル燃料もガロンをリッター換算してみたがはっきり申し上げて日本より単価は高い。自前で北海油田を有しているUKではあるが日本より高いのは多分相当税金が掛かっているからだと思う。付加価値税のBATは20%だし、所得税は一番最低の税率でも収入の45%近くを国に持っていかれる。高額所得者は90%だ。

 UKでは給油所はガソリン・スタンド(GS)とは云わずにペトロ・ステーション(Petrol Station)と云うが基本的にセルフサービスである。まず自分で燃料を入れてそれから売店(PSでは大抵コンビニの様な売店が併設されている)の中に入って自分の給油したスペースの番号を告げて支払うシステムだ。つまり先払いではなく後払いだ。いかにも知っていると云わんばかりの説明だが実は今回の旅行では一度しか給油していない。それもどうしたら良いのか分からず近くに立っていたペトロのおじさんにその事を伝えたら「しょうがないなぁ」という様な苦笑いで給油してくれた。

 今回はレンタカーは満タンにして返す必要がない契約だったのだが途中必要に応じてドライバーが自費で燃料補給をしなければならない。良く考えて無駄の無いように入れた方が良いとアドバイスされたが日本のようにあちらこちらに給油所がある訳ではなく、街と街のあいだ特に山間部は長い距離ペトロが見当たらないのが普通である。それで6日目は移動距離が長かったので軽油は1/3位残っていたが出発地の街外れで早めに補給をした。しかしディーゼル車は燃費が良いのか、8日間でかなりの移動距離(1,500km強)を走ったが一度しか給油しなくて済んだ。

 一日目は19時頃にB&Bに着いたがさっそく夕食を取ろうと外に出掛けた。エジンバラは緯度は北欧のストックホルムより少し下くらいなので夏は夜の更けるのが遅い。いわゆる白夜に近いものがある。今回の旅ではスコットランドと湖水地方とウェールズそしてアイルランドを廻ったが夜の9時半ぐらいが黄昏である。サマータイムで1時間早くなっているので日本でいえば8時半くらいの時刻だがそれにしても明るい。何でも夏至は暗くなるのは午後11時頃らしい。(UKでは「夏至」は「The Longest day」という。 ※ノルマンディー上陸を描いたあの有名な戦争映画「史上最大の作戦」の主題歌のタイトルにもなりました)

 エジンバラの街中でイタリアンの店を見つけて入ったが美味しかった。翌朝B&Bの朝食を待つあいだイタリアンの親子連れが同宿していたので昨日の夕食はイタリアンを食べたと云ったらUKではイタリアンは食べないという。やはり本場には敵わないという事らしい。残念ながら初日の夕食の写真はない。成田を出発して16時間も移動に取られたので疲れてそれどころではなかったのだ。

 その夜はよく眠れた。

駐車禁止の道路標識.jpg 

<朝の散歩でメインストリートから住宅地に入ったらご覧の標識が。8:30am-5:30pmとあるのでこの時間帯以外は路肩に車を駐めていても違反切符を切られることはない。ポピュラーな観光地などでも夜は路上駐車OKである場合が多い> 

 翌朝6時頃に目が覚めると雲は多めながらも空は晴れていた。心なしか肌寒い。多分気温は12℃程度だろう。スコットランドに限らずUKのどこにいても夏の日中暑くても22℃を超えることは滅多にない。したがってウインドブレーカーなどのジャケットやフリース若しくはセーターなどは夏も必需品である。今回は「英国では一日の中に四季がある」という喩えを実感した旅でもあった。

 買いたいものもあったので朝食前にうちの奥様を誘って朝の散歩に出掛けた。

きょうかい? いいえミサは昨日でした。.jpg教会の尖塔.jpg初代ランドローバー.jpg車内はこんな感じ.jpgパブです。昨日ここを知っていれば入ったのにぃ!.jpgフラワーポッドまでホースが繋がって水遣りをしている.jpgバスにはエジンバラの文字が.jpg駐車場の壁.jpg 

 買いたかったのはブラウン・ブレッドである。英国の朝食には欠かせないものだが日本では何故か殆どお目に掛かれず本場で買って食べようと思ったのだ。わたしはあのパサパサ感と全粒粉の雑味のある豊かな味わいが好きで、現在の赴任地である安曇野でも有名なベーカリーを探したが見つからず、一度「安曇野スィート」で1ヶ月間の期間限定で味わえただけである。

 住宅街を歩いていると異国に来たとの感が強くなる。ライムストーンで出来た教会や住宅、そして丁寧に手入れされた庭や薔薇などを見るとやはりここは英国の一部なのだとあらためて思う。(前回の記事にも載せたが)途中古いランドローバーを見掛け写真を撮った。結構感動した。

 メインストリートから外れてお店を探していたらBP(ブリティッシュ・ペトロリアム)の給油所がありCOSTAもあったので入ってみた。目的のブラウン・ブレッドが置いてありさっそく購入した。ついでにミルクチョコレートも買った。生鮮食料品や一般的な加工食品には税金が掛かっていないので安い。大体日本の半額である。今日の昼食はこのブラウン・ブレッドにハムとかサラダをはさんでサンドイッチにしようと決めた。エジンバラ出発前に市内の中心部にあるM&S(マークス&スペンサー(Marks & Spencer))で買う事にした。

 それからB&Bに戻って朝食を摂りながらまずは有名なアーサーズ・シートと謂われる岩がある丘に登る事に決めた。場所はホリールード公園の中だとは事前に調べておいた。ちなみにB&Bの朝食はオーナーが寝坊をして30分待たされた。典型的なスコットランド・ブレックファストだったがあとで後で考えると寝坊して焦って作ったのか品数が足りなかった様に思う。

minto house.jpg 

 アーサーズ・シート(Arthurs Seat)とは伝説のアーサー王の玉座という意味である。玉座といっても実際に椅子がある訳ではなくて見晴らしの良い丘の頂上にある岩場を称してそう呼んでいる。

 初日はエジンバラに泊まったが、翌日エジンバラ城を観光する積もりは更々なく、このアーサーズ・シートがある小高い丘に登ろうと日本を発つ前から自分では決めていた。うちの奥様はスコットランドに四年前に来ていてエジンバラ城にはその時に来ているので行くなら違う場所にしようと考えたのだ。それに四日後には有名なミリタリー・タトゥーがエジンバラ城の前庭で開催されるのでステージが設営されていたりと普段のエジンバラ城とは雰囲気が違うので敬遠したのだ。当初はスケジュールが合えばミリタリー・タトゥーも見たいと思いチケットを購入しようと考えたが2月の時点ですでに良い席はソールド・アウトで、残りの席も末席であるにも関わらず値段が高かった。それにこれに合わせると予定にかなりの無理が生じる。そうしてまでハイランド地方からエジンバラまで戻って見るのも大変だと思い諦めた。

 その代わりアーサーズ・シートに行こうという事になったのだ。お昼前後にはスターリングへ向かう予定だったので時間的にもエジンバラではここ一箇所しか行く余裕がない。

 問題はうちの奥様にこの丘を登れるだけの体力があるかどうかだ。

アーサーズ・シート.jpg 

 この丘はホリー・ルード公園内にありエジンバラのどこからも見えるのだが行き方がよく分からない。目の前に見えるものだから安易にすぐ行けると思ってあちらこちら車を走らせたが一方通行などでホリー・ルード公園にすら辿り着けない。仕方がないので市内の中心部の車のあまり通らない道路の路肩に一旦停車してカーナビのダイヤルをぐるぐる回してスペルを打ち込みようやく公園の駐車場をセッティングした。カーナビのマニュアルがある訳ではないので目的地一つ設定するのにも苦労する。目的地設定の選択肢が広くすぐに検索できる日本のカーナビの優秀さをあらためて見直した。

 カーナビの指示通り車を走らせようやく駐車場にたどり着いた。ちょうど通り掛かった地元の女性に尋ねてみたら下から登ると往復四時間は掛かると云われた。そこで(これでは次の目的地スターリングに着くのが遅くなってしまうので)近道はないかと訊いたら、「この先に丘を周遊する道路があるからそこを車で登ってゆくとほぼ反対側に大きな池が左手に見えるのでそのすぐ先の左手の駐車場に車を駐めてそこから歩いて登ればいい。大体20分で登れる」と教えてくれた。

 その場所というのが上の写真である。先ほどの道を尋ねた所では見上げる様な崖を大きく迂回して登るルートでアーサーズ・シートも崖に隠れて見ることさえ出来なかったがここからは頂上が間近に見えた。

 聞いた通りこの駐車場は無料だった。ラッキー。持つべきは英語の話せる女房である。あは!

Arthur01.jpg 

 アーサーズ・シートは突風が吹き荒れていた。

 登り初めは緩やかな傾斜から始まった。のどかな風景である。少し登ったところで360°パノラマを撮ったのでご覧あれ。

Arthur03.jpgArthur04.jpgArthur05.jpgArthur06.jpgArthur07.jpgArthur08.jpgArthur09.jpgArthur11.jpg 

 名も知らぬ小さな花が咲いている。緯度注1)が高いので日本では本州の高山や北海道にしか咲いていない様な草花ばかりである。暫し登ると傾斜が徐々にきつくなって来る。うちの奥様が少し遅れ始めた。構わず先で待つ事にした。

 注1) エジンバラの緯度はスウェーデンの首都ストックホルムとほぼ同緯度。

Arthur02.jpgArthur011.jpgArthur012.jpgArthur013.jpg 

 うちの奥様がようやく追いついた。わたしは途中で岩に座って待っていたのである。喉が渇いていた。ミネラルウォーターはあと少ししか残っていない。水を買っておかなかったことを後悔した。ここで少し奥様に休む時間を与え雄大なランドスケープを眺めた。見晴らしが良くすがすがしい。ここから先はだんだん傾斜がきつくなる。しかしあと少しの辛抱だ。

Arthur014.jpg 

 頂上に着くと嵐の様な風が吹き荒んでいた。

 なにひとつ風を防げるものがないエジンバラ市街で最も標高の高い丘である。眼下にエジンバラ城が見える。ミリタリー・タトゥーの特設ステージまで見る事が出来た。しかし風が強くアーサーズ・シートの小さな標にしがみついていないと転倒してしまいそうだ。立って写真を撮ると身体が揺れて望遠にするとブレてまともに写真が撮れない。仕方がないので標に掴まりながら360°のパノラマ撮影を試みた。

玉座からの眺め01.jpg玉座からの眺め02.jpg玉座からの眺め03.jpg玉座からの眺め04.jpg玉座からの眺め05.jpg玉座からの眺め06.jpg玉座からの眺め07.jpg玉座からの眺め08.jpg玉座からの眺め09.jpg玉座からの眺め10.jpg 

 最後のはだかの彼に敬意を表して一枚撮ってあげた。手にしているのはもちろんスコットランド国旗。腰のあたりのだぶつききはご愛敬である。

はだかの彼.jpg 

 帰りは草花を愛でて駐車場まで降りた。

玉座からの眺め11.jpg玉座からの眺め12.jpg 

 アーサーズ・シートを後にした。時刻は7月30日11:20AMだった。

 これから市街に戻り観光案内所やM&Sに行ったりして色々探しものをしたり買い物をしなければならない。スターリングへはその後出立となる。

 <つづく>


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コメント 10

くまら

イングランドと喧嘩しまくったウィリアム・ウォレスの生誕地ですね
by くまら (2014-09-13 23:25) 

たいへー

冒頭から耳が痛い・・・(冷汗
by たいへー (2014-09-14 07:50) 

U3

☆くまらさんへ
 メル・ギブソン主演で「ブレーブ ハート」という映画にもなりましたね。
後日スターリングでそのウィリアム・ウォレスやロバート・ザ・ブルースの話が一杯出てきますよ。
 ところでこれは過去ではなく現在でもあるのですね。スコットランドのイングランドからの独立は果たしてどうなるのか。18日の住民投票に注目です。
by U3 (2014-09-16 12:47) 

U3

☆たいへーさんへ
 そうなの?(笑)
by U3 (2014-09-16 12:48) 

ソニックマイヅル

私は身内に厳しいので反省したいと思います。^^;汗

by ソニックマイヅル (2014-09-16 21:24) 

U3

☆ソニックマイヅルさんへ
 厳しさも程ほどに(笑)
 Xperia Z3とiPhone 6 Plusを比べると性能的にはソニーの勝ちって思えるよね。でも性能だけじゃ今の消費者は手を出さないところが悩ましいところ。
 わたしはiPhone派だけれどiPhone 6 Plusはデカ過ぎるという感じが致します。サムスンのギャラクシーの後追いしてどうするのという感じです。4sの大きさでフルHDを達成していたらクールでスマートだったのにね。そして悩みもしなかった。
 という訳で現在もどちらにしたら良いか思案中で申し込みすらしていません。
by U3 (2014-09-17 12:58) 

やおかずみ

コメント、ご訪問ありがとうございました。
by やおかずみ (2014-09-19 07:37) 

U3

☆やおかずみさんへ
 こちらこそ。
by U3 (2014-09-19 12:24) 

駅員3

ガソリンがUKでは日本よりも高い・・・信じられません。
ヨーロッパは地中海沿岸を20代のころ放浪しただけです。
ランドローバー・・・いい味だしてますね。
僕も今のJK Wrngler にするとき、ほぼこれと同年代のロンドローバーが候補に挙がっていました。引いているトレーラーはイギリスのアーミーでしょうか?
あまり見たことのない形式のものです。
少なくともUSではありませんね。
by 駅員3 (2014-09-20 09:40) 

U3

☆駅員3さんへ
 ランドローバーそのものが元々ヨーロッパに配置されたUSアーミーのジープを見てローバー社が1946年(何と第二次大戦終結の翌年)に同仕様のものを真似て作ったのが発端なのだそうです。
 でも1950年代には初代の1シリーズは終了しているのでこれがもし初代のものだとすると貴重な車だとは思います。
 
by U3 (2014-09-24 12:27) 

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